翌日すぐに内見の予約が取れ、あかりは人生で初めて南武線という電車に乗った。

セシーズイシイの物件はあかりの想像以上だった。確かに部屋は19平米と決して広くはない。キッチンにあるコンロも1口コンロのため、料理をする時には、時間がかかってしまうだろう。冷蔵庫もいわゆるミニ冷蔵庫と呼ばれる種類のもので、たくさん物を入れることは難しい。

でも、あかりはこの武蔵新城という街とこの部屋での自分の新しい生活を想像するとワクワクした。

何故なら、自分の願いが叶う街だという直感が働いたから。

今までは仕事三昧で、住んでいる部屋にも眠るためだけに帰る日々。住んでいる街に何の愛着もなかった。極論、どんな部屋でもどんな街でも、寝る場所さえあれば良かったのだ。

そんな生活から転機を迎えているあかりは、

~転職と引っ越しを機にもっと人間らしい生活をしたい~

そう願っていたのだ。

・マンションのすぐ近くに24時間営業の西友。

→手取りが減るから、今までよりも自炊をしなきゃいけないから、こんなに近くにスーパーがあって嬉しい!

・家の近くに飲食店もたくさんある。

→外食にも困らなさそう!しかもリーズナブル!!おしゃれなお店もある。

・マンションの下にはおしゃれなカフェが!

→こんなカフェが家の近くに欲しかった!嬉しいぞ!!

部屋を内見したあと、不動産会社の人から街の説明を受けながら、あかりは妄想が止まらなかった。

無機質だった都内一人暮らしの生活から、この街に引っ越すことで、人との繋がりが広がりそう。

そんな予感を感じたのだった。