チョコが12年前にやってきた永井家は、父:正夫と母:玲子、そして一人娘の華の3人暮らし。
長年、川崎市宮崎台にある父:正夫が勤める会社の社宅に住んできた。3LDK、2階にある住まいに、3人と一匹。
そんな永井家が転機を迎えた。
今住んでいる社宅の築年数経過に伴い、建て替えをすることが決まったのだ。
「お父さん、わたしはこの場所が好きだから離れたくないわよ。」
母:玲子は声を上げる。
「俺だってそうだよ。もう20年も住んでいるし、家が変わったとしても慣れ親しんだ宮崎台がいいよな。」
「そうよ、それにチョコも犬の年齢で言うと、高齢になってきたし。あまり引越しの負担をかけたくないわ。」
「そうだよねー。チョコ。引越ししても、いつもの散歩道を歩いて散歩したいよねー。」
華もチョコに話しかけた。
「でも、お父さん。引っ越すとしたらいつになるの?」
「建て替えが始まるのが来年4月ごろからって言っていたから、年内中に引越し先が見つかって動けるといいと思う。華が大学に行くことを考えると、今までの広さはいらないよな。2LDKくらいでいいんじゃないか?」
「あー、わたしがいない前提!!!」
「そりゃそうだろう。お前は大学入学と合わせて一人暮らしするんだから。生活していける力は若いうちに付けておいたほうがいいぞ。」
「はーい、わかってますよー。」
「受験勉強も頑張れよ。」
「はーい。」
「ねぇ、華。じゃあ、今週末はお母さんと一緒に新しい家を探しに行こうー。」
「えー、わたしは住まない家なのにー!?」
「住まないって言ったって、いつだってご飯食べに戻ってきたっていいんだから。それにチョコの新しい住まいになるんだから、相棒の華にちゃんと選んでもらわないと、チョコも不機嫌になるでしょう?」
「ま、それはそうだね。わかった。仕方ないから受験勉強の時間を削って、付き合ってあげるわよ。その代わり、夜はすき焼きにしてね。ご褒美、ご褒美♪」