この夫婦の会話をきっかけに、大智の気持ちはどんどん独立への方向に傾いていった。

~型にハマる必要はない~

その香織の言葉が、何かあると頭をよぎるようになり、規定のルールや慣行にとらわれずに「自分はどうしたいのか?」と自分自身に質問をしてみると、働き方を変えたいという気持ちが強くなっていったのだ。

今までは同じ税理士か他の士業の先生たちとの交流が主だった大智は、交友関係も変えていった。

士業で既に独立をしている人たち、そして、士業以外で独立をしている人たちが集まりそうな勉強会や交流会を見つけては参加をし、どんな働き方、どんな生き方をしたいのか、たくさんのロールモデルを見て見つけるようにしていった。

3ヶ月後。

遂に大地と香織はある決断をした。

その決断とは「住まいを移すこと」。

20代の頃に必死で自分の力をつけようともがいていた時は、二人にとって東京という場所は必要不可欠な場所だった。

しかし、40代も近くなってきた今、本当に自分たちが欲しい暮らしを考えた時に、この都会の便利さや人の多さというのは、窮屈さを感じるようになっていた。

二人にとってこれからの生活に必要なもの。

それは「緑がある暮らし」「自然光が差し込む生活」「念願のワンちゃんと共に生活できる暮らし」だった。