「香織、俺、退職願い、明日会社に提出してくるよ。年内で退職したいと言うつもり。」

「うん、わかったー。いってらっしゃい。」

「そうそう、引っ越しするのに良いエリア見つけたよ。この前の交流会で知り合った人が、たまたま大家さんでさ。ペットOKの物件も扱っているんだって。コワーキングスペースも運営しているらしくて、今度いろいろ案内するって言ってくれている。」

「本当!?大ちゃん、そういう嗅覚、優れているよね(笑)」

「うん、俺、人には恵まれる自信がある。」

こうして大智が退職願いを会社に出し、受理をされた週末。大智と香織は田園都市線の宮崎台に出向いた。

大智が交流会で出会った大家さんが物件を見せてくれるというのだ。

田園都市線宮崎台駅。閑静な住宅街という感じだ。高級マンションが立ち並ぶというより、古くから住んでいる方やファミリーに人気のあるエリアという雰囲気で、二人との駅に降り立った瞬間から、今までの東京暮らしとは違う空気を感じた。

そして、駅から10分ほど歩き、物件にたどり着いた。

目の前に公園があり、部屋の窓からは敷地内の家庭菜園に植えている野菜が見える。

外観は普通のアパートという感じだが、部屋の中はリノベーションされていて、部屋の雰囲気を見て一瞬にして二人のテンションは上がった。

2LDK。

寝室スペースに、香織がヨガをするスペースに、大智の仕事スペースに、この広さがあれば十分だった。

「いいですね!この部屋!!一気に自分たちが住むイメージが現実的になってきました。ちなみに家賃いくらでしたっけ?」

「ここは家賃が12万5千円で、管理費が5,000円。合計で月13万円ですよ。」

「え?13万円ですか?この広さで?」

「都内から引っ越して来られる人には、いつも驚かれます。都内は家賃が高いですからね。」

「はい、今住んでいるところは1LDKで同じくらいの家賃を払っていました。」

「あと、ワンちゃんを飼う予定でしたよね?うち、ペットOKですし、この辺は道路も広いので散歩もしやすいと思いますよ。東京だと道路が狭くて散歩が大変だったりしますからね。」

「そうですよね。色々教えてくださってありがとうございます。問題なく審査が通れば、ぜひこの部屋でお願いしたいです。」

大智と香織の新しい住まいが始まった。