「ねぇ、来週の水曜日は陸の誕生日だからね。早く帰ってこられる?」

「仕事、詰まっているけれど、その日はなんとしても早く帰ってくるよ。準備は任せてもいい?」

「うん。19時くらいからお祝い始められると嬉しいんだけど・・・」

「19時な、わかった!ちょっと遅れるかもしれないけど、会社出る時にまた連絡する。」

来週は息子・陸の誕生日。

毎年、誕生日の当日は涼介と真衣と陸の3人でお誕生日会をして、その週末はじぃじとばぁばが遊びに来てくれて、3世代でもう一回お誕生日会をするというのが大塚家の習慣となっていた。

陸から、「お誕生日の日は手巻き寿司が食べたい!」とリクエストももらっていて、真衣はパートと家事の合間を縫って、陸のお誕生日会の準備を一人で進めていたのだ。

誕生日当日。

手巻き寿司もできた!ケーキも陸の好きなチーズケーキを手作りした!お祝い用の部屋のコーディネートも出来た!

あとは、涼介を待つだけとなった時、LINEに1通のメールが届いた。

その時、何故か真衣は嫌な予感がしたのだが、その嫌な予感の原因をすぐに真衣は知ることとなった・・・。

「ごめん。トラブルが起きた。今日、多分遅くなる。」

涼介から届いたLINEには、こう書いてあった。

「え??」

真衣な事態がすぐには飲み込めなかった。

トラブルが起きた・・・、今日は遅くなる・・・。え?ということは、陸の誕生日をお祝いする場所に涼介は来ないということ・・・・・?

「え?だって、もう陸も楽しみに待っているよ。何時くらいになるの?」

そう真衣が返したLINEのメッセージは、既読にすらならなかった・・・。

陸に、パパは仕事で来られないことを伝えると、嫌だ!嫌だ!と泣き出し、案の定、誕生日を祝うどころではなくなった。

泣き疲れて、何も食べずに寝てしまった息子を見ながら、真衣は張り詰めていた糸が「プツ」っと、切れた感覚を覚えた。

~私たち、何のためにこの場所に引っ越したんだろう?~