土曜日。昼下がりの14時。
あかりはマンション1Fにあるカフェ「新城テラス」でコーヒーを片手に読書をしている。
昔はビジネス書ばかり読んでいたけれど、最近のお気に入りは小説。
スターバックスでブラックエプロンを着て活躍をしていた店長さんの入れてくれるコーヒーはいつも美味しい。
「美代さん、今日もコーヒー美味しいですー。」
「本当!?ありがとうー。」
「ハーブコーディアルも新しいのが発売になるんですよね?私、また買おうかな。前のやつもめちゃくちゃ美味しかったです。」
「そうでしょー。今回のも、とってもオススメ!あかりちゃんの分、予約して取っておいてあげるね。」
「ありがとうございますー。」
何気ない日常の会話。
でも、この何気ない会話は、あかりが7年間失っていた会話だった。
そして、失いながらも心から欲していた会話だった。
手取り40万円から20万円に。
それとともに住む場所を変えたあかりは、お金には換えられない何かをこの武蔵新城という街で手にしたのかもしれない。
Fin