⽇本を離れて早10年。
⾹織はため息をついた。

「あー、どうしよう」

フランスの住み⼼地はいい。
夫ポールも料理⼈として軌道に乗ってきたし、⾹織のウェブデザインの仕事も順調だ。
息⼦のルイも学校⽣活にも⼤分慣れて楽しそうに通っている。

「ねぇ、⼼配なのよ。⽇本に帰ってこない?」

⺟からの電話で考える。
いずれはポールと相談して⽇本に⽣活の拠点を移すつもりだった。
ルイの成⻑には、⽇本とフランスどちらの⽂化も⼤切だと考えるからだ。

「・・・ねぇ、ポール。⽇本に住むことを考えない?」
「うーん、そうだね。僕も考えていたよ。ルイのためにも⽇本で住むことはとてもいいことだと思う。」

次の⽇、遊びに⾏きたそうなルイを宥めながらポールが聞く。

「ルイ、ママとパパと⼀緒に⽇本で暮らしてみないかい?」
「いいね!⽇本のおじいちゃん、おばあちゃんに会える!?」
「もちろん!毎⽇でも会えるように近くに住もう!」
「やったーーー!」

同居も考えたが、⾹織が結婚して家を出る時に、両親は広くなってしまった家を⼿放し、
今は夫婦⼆⼈で住みやすい家に住んでいるのだ。30年前より今の⽅が仲良くなった両親を邪魔したくない。
ポールと相談し、両親の住む宮前区あたりで家を探すことにした。

「ルイ、どんなお家に住みたい?」
「僕は学校が近くて、休みの⽇はサッカーができるお家がいい!」
「なるほど、じゃあポールは?」
「僕はフランスにいた時をいつでも思い出せる家がいいな!」
「ママはどんなお家がいいの?」
「うーん、ママはお洒落で綺麗で駐⾞場があって駅から近くて・・・」
「多いな!」